solid bond

never a dull moment

最近好きなサウナ

久しぶりにサウナのランキング。

 

最近好きな#サウナ #山梨
1位 #みたまの湯
2位 #尾白の湯
3位 #しもべの湯
4位 #リブマックス
5位 #かまなしの湯

 

好きなサウナというより、よく行くサウナのランキングだ。

一番のポイントはストレス無く入れるか、これは「空いている」とニアイコールだ。

みたまの湯は相当混んでいるが、キャパがデカいのでストレスを感じない。

尾白の湯、春秋冬はそんなに混んでいない。とても濃ゆい露天風呂が素晴らしい。

しもべの湯は遠いが、キャパのデカさが魅力的。冬は水風呂が冷たい。

リブマックスも結構空いていて重宝している。ととのい椅子を置いてくれれば最高なんだけど。

かまなしの湯は、年寄り200円なのでめちゃくちゃ老人が多いが、サウナは割と空いている。水風呂が冷たいのでととのう。

 

前回2023年4月のランキングは以下の通り。

offsidedrug.hatenadiary.com

 

通常使用外であれば、ウェルビー栄が別格。駿河健康ランドの別荘な感じも最高、こちらは買収された効果が良い方向に出て欲しい。

遊園地的な観点からは静岡の鷹の湯が面白い。地獄の熱さを体感できる。

若きブラッド・ピットとモンタナの大自然が美しいリバー・ランズ・スルー・イット

「午前10時の映画祭」で92年公開の「リバー・ランズ・スルー・イット」を30年ぶりぐらいに観た。

ロバート・レッドフォードが監督の元、フライフィッシングの神々しい躍動感と当時20代後半、売出し中のブラッド・ピットの若々しさが、アメリモンタナ州雄大な自然を舞台に記録された傑作だ。

 

神とも言える雄大な自然が見守る中、二人の兄弟の成長が描かれるが、デカい何かが起こることも無く、淡々と、ゆったりと話が進んでいく。このタイム感が非常に心地よい。90年代はこういった過剰な演出がない映画が結構沢山あった。

 

改めて観ると、ブラッド・ピットはニヤニヤ笑ってばかりで、それほど演技がうまい感じでは無い。一方で主役のクレイグ・シェイファーは、口の動きひとつで感情を表現するなど映画に深みを与える名演だ。

 

約2時間、飽きることなく進み、兄弟のエピソードがしっかり描かれるが、クライマックスはまさかのモノローグで映像無しだ。それが凄く自然で、納得感すらある。

 

若い頃は当時の自分を主人公に置き換えて感動していたものだが、今は神父の親父に同調してしまうな。

良い時間を過ごせた。

スモール・フェイセズの軌跡

彗星の如く駆け抜けた若きモッズバンド

スモール・フェイセズは、子役で歌手経験もあったスティーヴ・マリオットと、マリオットが楽器屋でバイトをしているときに知り合ったロニー・レインを中心に、1965年ロンドンで結成された。マリオットは1947年生まれなので、生きていれば77歳(2024年時点)。60年代ミュージシャンとして一括りにされることが多いが、ジョン・レノンが1940年生まれなので、小学校が被らない、ひとつ下の世代といえる。同級生はデヴィッド・ボウイマーク・ボランブライアン・メイ、70年代に旬を迎えたアーティストばかりだ。ちなみに好敵手的な関係で語られることが多い(成功度合いはぜんぜん違うが)スティーヴ・ウィンウッドは48年生まれで一つ年下だ。二人のスティーヴという名をもつ天才アーティストは、当時のUKロック界隈では、結構な「低学年」だった。

ロンドンの2大モッズバンドとして、ウェスト・エンドの代表がフー、イーストエンドスモール・フェイセズだとよく言われる。ただ、本物のモッズはスモール・フェイセズだったことは明白で、フーのギタリスト、ピート・タウンゼントも「フーは元々モッズじゃない、スモール・フェイセズはモッズの中で生まれた」的な発言をしていた(と思う)。オシャレ度合いの違いは圧倒的、これは素人が観てもはっきりわかる。音楽的にもデビュー盤のR&B色の強さはスモール・フェイセズの大きな特徴になっていて、自然にこなしている感じも本質的な要素が大きいと思う。スタートはR&Bをベースとしたモッズサウンドだったが、その後サイケデリックな要素を強め、ミュージカル的なものまで取り込み、一方でハードロックの元祖的なものをポップな要素を含みながら作っていく。変化を恐れない姿勢はまさに「チェンジングマン」ポール・ウェラーなどに引き継がれていることは周知の通りだ。

スモール・フェイセズの強みはスティーヴ・マリオットの圧倒的なボーカルと、中期以降のオリジナルソングの曲の良さにある。一方で、ギターのワンパターンなコードストロークや、グルーヴを全く感じさせないリズム隊など、演奏力では同時期の他のバンドの後塵を拝する。音の録り方も多いに関係していると思うが、凄く下手くそに聞こえる。ただ、グルーヴゼロのままギターをジャカジャカ鳴らす衝動的な演奏とローファイな録音のおかげで、90年代のUKロックバンド、更にはガレージバンドやパンクの元祖とも言えるような音になっている。90年代にリスペクトを集めた理由の一つだと思う。

レーベルの移籍やマネジメントとの確執などで、きちんと評価できるオリジナルアルバムが3枚しかないのは、後世の人間にとって不幸だ。真っ当な状況で作られたアルバムは「Ogdens' Nut Gone Flake」だけかと思う。
活躍時のメンバーの内、マリオット、ロニー・レインは早逝し、ロック界のまさに「顔役」だった元気者のイアン・マクレガンも二人に合流してしまった。90年代のようなモッズ再評価が今後見込めない中、バンドはひっそりと歴史の陰に隠れようとしている。かつての名盤も今や語られることがほとんど無くなってしまったのが寂しく残念だ。

 

Small Faces

デッカから出た唯一のオリジナルアルバム。デビュー・シングル「What'Cha Gonna Do About It」、代表曲「Sha La La La Lee」を含み、最高位は全英3位。トップ10内に3ヶ月留まったロングセラーアルバムだ。
モッズっぽいR&B趣味を、10代のバンドらしくドタバタ感満載に鳴らす、けたたましいアルバムになっている。中心にあるのは爽やかな見た目とのギャップが半端ないマリオットの黒すぎるボーカルだ。つんのめったヘタウマ感満載のサウンドも、マリオットの声が乗るだけで相当な説得力を持ち、一級品に変わる。

アルバム1曲目はなぜかベースのロニー・レインがメインボーカルを務める「Shake」。この曲やシングルカットされた曲の完成度はそれなりだが、いくつかの曲は緩いプロダクトでまるでガレージバンドのようだ。この傾向は解散するまで変わらないが・・・。「You Need Loving」はレッド・ツェッペリンが真似たことで有名だが、ボーカルだけレッド・ツェッペリンに移籍していたら一体どんな音になっていたか、妄想してしまう。

エンジニアは、この後レッド・ツェッペリンで良い仕事をするグリン・ジョンズ。ビートルズの映画「ゲット・バック」ではモッズスーツに身を包んでクールに登場したのが印象的だった。一般的な評価は知らないが、個人的にはあまり良いエンジニアとは思わない。このアルバムでも、ビートルズ「LET IT BE」のグリンバージョンと同じように、音のクオリティの低さを感じてしまう。本来選ばれるべきではないテイクがアルバムに収録されてしまっているような・・・。

バンドの勢いやマリオットの迫力あるボーカル、モッズの教科書として最適な一枚だが、このバンドならではのオリジナリティが炸裂するのはこの後からだ。是が非でも聴かなければならない不朽の名盤では無い。

 

Small Faces(the first immediate album)

より自由な環境を求め、モッズとの繋がりも深いイミディエイト・レコードに移籍し67年に発表されたセカンド・アルバム(日本では「From the Beginning」がセカンドアルバム的な扱いとなっているが、これはボツ曲などを集めた編集版)。1STアルバムと同様バンド名がタイトルとなっているため、「the first immediate album」と呼ばれている。
デッカ時代はモッズアイドル的な側面が強調されR&Bカバーも多く収録されたが、この作品は全曲バンドのオリジナルで構成された。洒落者ロニー・レインのセンスも強く反映され、マリオットのハード路線と上手く絡み、またドラッグの影響もあり、R&Bバンドから脱却し、ブリットポップの元祖とも言える、トラディショナル、ポップ、ロック、R&B、ガレージ、パンクなど様々なエッセンスが散りばめられた独自の音作りに成功している。

アルバムは、デッカ在籍時代に書かれた「(Tell Me) Have You Ever Seen Me」から始まる。ドタバタした感じは1STに近いが、メリハリのついた歌の迫力は段違いだ。
「Something I Want To Tell You」は後のブリットポップにも繋がるいかにもUKないなたい曲で、ロニーの色が強い。この曲や「Feeling Lonely」、ご機嫌なインスト「Happy Boys Happy」あたりでは、イアン・マクレイガンのキーボードの存在感が大きい。ロッド・スチュワートも歌った「My Way Of Giving」、シンプルなギターリフがかっこいい「Talk To You」でのスティーヴのボーカルはまさに本領発揮でかっこいい。このあたりのハードな曲もポップに洒脱に仕上げるのがこのバンドの個性だ。そしてthe JAMポール・ウェラーもカバーした「Get Yourself Together」は非常にブリットポップ的な曲で、ワクワクするイントロからのAメロの流れ、流れるようなブリッジのメロディー、ライブで盛り上がりそうな合いの手、イアンのキーボードのメロディ、後半盛り上がるマリオットのボーカル。まさに極上の一曲だ。このアルバムを象徴してはいないが、代表する曲であることは間違いない。JAMのバージョンもリスペクトしつつパンクの疾走感を加えた最高のカバーになっているので、未聴の方は是非。アルバム最後の「Eddie's Dreaming」もロニーの色が濃いナンバーで、金管楽器とパーカッションをうまく配置した面白い曲になっている。これもいかにもUKな名曲だ。

アルバムは全英12位と「まずまずのヒット」止まり。モッズアイドル的なものを求めるオーディエンスの期待とのギャップを反映した結果か。このあたりの擦れ違いの積み重ねがバンドの早期崩壊に繋がっていく。
ただ、ポール・ウェラーが92年に「俺の人生の10枚」的なものにこのアルバムを選出するなど、非常に評価が高い一枚で、俺も凄く好きな作品だ。

 

Ogdens' Nut Gone Flake

1968年にリリース。
一般的に、スモール・フェイセズの代表曲とされる。
曲の質は圧倒的に高い。モッズ・アイドルのイメージから脱却し、ハードなロッカーに成長しつつあった「アドレナリン・モンスター」のマリオットと、モッズの中のモッズとしてお洒落なセンスを持つレインのソングライティングは、優れたソングライターが多くいたこの時代でも際立って素晴らしい。このアルバム(と、周辺のシングル)に限ればレノン・マッカートニーに匹敵し、グリマーツインズ、レイ・デイヴィスより上だ。
マリオットの同時代では最高峰のロックボーカルも、サイケデリックで圧倒的でありながら、ポップさを保っているのが最高だ。
センスの良い曲とハードなギター、パワフルなドラム、ちょっとトラッド的なフォーク感、そしてサイケデリックな要素が組み合わさり、まさしくUKロックの最高峰。ブリットポップの元祖とも言える。
ちゃんと作っていればビートルズの諸作を越える傑作になっていたんじゃないか・・・、それぐらいポテンシャルのある作品だ。

アルバムは、A面「Ogdens' Nut Gone Flake 」B面「Happiness Stan」の2つに分かれていて、永らくコンセプトアルバムの傑作とされていた。だが、曲単位で聴くことが多い今の時代、B面のコックニー調のセリフとか結構面倒だ。また、引き合いに出すのもあれだが、ビートルズアビーロードのBサイドと比べると、計算された盛り上がりがなく、言葉がわからない日本人にはあまり伝わらない。要はコンセプトアルバムとしての良さはわからない。

プロダクションの弱さも耳につく。レコーディングエンジニアは、当時人気のグリン・ジョンズが担当。グリンは、バンドの勢いを尊重しリアルな音を優先する傾向があり、レッド・ツェッペリンなどでは良い仕事をしているが、演奏がそれほど上手では無いスモール・フェイセズではそれが逆効果をとなり、演奏、特にマリットのギターの適当な感じが気になる。ミックスもコンプレッサーを過剰にかけて音の粒子を壊したような感じで、故意にそうしたのだろうが、サイケデリックでメロディアス、コンパクトな曲に、ふさわしいサウンドではないと思う。アレンジも中途半端なものが多い。適当な演奏を、音を壊して誤魔化しているように聴こえる。
グリン・ジョンズでは無くジョージ・マーティンが現場を仕切っていたら全然違う作品になっていたんだろうなと妄想してしまう。「ゲット・バック」みたいに。

最近数年間、そう、フジロックでロッド無しの再結成FACES(アンコールで"All or Nothing"を演奏)を観た後ぐらいから、スモール・フェイセズを聴く機会が大幅に減った。
ティーヴ・マリオットの歌声を聴くときは、ほとんどがハンブル・パイの曲になった。スモール・フェイセズは彼のキャリアの未完成な時期とみなしていた。
現在では、存命の中心メンバーはドラマーのケニー・ジョーンズだけ。得するヒトも減ったこともあってか、メディアも、この名盤をあまり話題にしなくなった。
かつてはコンセプトアルバムの名盤として称えられていたこの作品も、いまでは「忘れられた名盤」に分類されるかもしれない。
アルバムを巡る状況は寂しい限りだが、久々にじっくり聴くと、やはり最高のUKロックアルバム。

このアルバム発表時のスティーヴ・マリオットは、若干21歳・・・。早咲きのバンドだった。

コンピレーション・アルバム

Smallfacesは、アルバムに入っていないシングル曲に名曲も多く、デッカ、イミディエイト双方のベスト盤をカバーしないと全体像がつかめない。
レーベルとのトラブル等もあり、アーティストの意向を無視した編集版も沢山でている。

From the Beginning

2ndアルバム的な扱いを受けている「From the Beginning」は、代表曲「All or Nothing」「My Minds Eye」が入っているため、代表作とされるケースさえある。

There Are But Four Small Faces

2nd「The First Immediate Album」をアメリカで出す際に編集した作品。地味渋な曲がカットされ、強力なシングル曲「Here Come the Nice」、「Itchycoo Park」、「Tin Soldier」が加えられ、非常に出来の良い「I'm Only Dreaming」も聴くことができる。秀逸なジャケットも最高で、アナログ盤を手元に置いておきたい作品だ。

The Autumn Stone

解散後に出された「The Autumn Stone」もイミディエイト時代のベスト盤的作品で、マリオットの才気溢れる名曲「The Autumn Stone」と「Wham Bam Thanks You Ma'am」を収録。現時点(2024)で配信サービスに無いのは寂しい限り。

ジュリエット・ビノシュとデップの存在感が光る「ショコラ」

2000年発表の名作「ショコラ」を午前10時の映画祭で観た。

レオス・カラックスの「汚れた血」「ポンヌフの恋人」の印象が強いフランスの大女優ジュリエット・ビノシュが「ギルバート・グレイプ」「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレムと組んだ作品。ラッセ・ハルストレム監督の映画らしく、穏やかな雰囲気の中でストーリーが展開し、最後はホッとするような形で柔らかく着地する。安心の映画だ。

放浪のジプシー集団のボス的存在でジョニー・デップが出てくる。これが圧倒的な存在感でクソかっこいい。ギルバート・グレイプと裏返しの役だが、自分の価値をわかってる大人の演技をみせている。

ギルバート・グレイプと同様に、「閉ざされた世界からの開放」がテーマ。ビノシュやデップら主役はひっくり返しの役だが、どちらも苦悩はかわらない。

だれることなく展開していくので集中して楽しく見れた。映画館で観れて良かった。

年齢別アルバム ポール・ウェラーのキャリアと変化

みうらじゅん氏は「ディランのアルバムは自分の年齢と同じ作品を聴け、味わい深いから」と「ディランがロック」の中で語っていた。当時のディランの考えや迷いが理解しやすくなると。
長いキャリアを誇るポール・ウェラーにも同じやり方が有効だと思い、まとめてみた。

画像
ポール・ウェラー年齢別アルバム

ソロデビューが33歳。スタンリーロード期でも37歳だ。この時期「モッドファーザ」とか「兄貴」とか言われて大ベテランの佇まいだったが、会社だとまだ課長前ぐらいの年齢だ。ジャムでのデビューが10代だったからな・・・。ジャム、スタカンを終え、キャリア3週目に入り、ビートルズスモール・フェイセズをベースとしたR&Bという昔からのフェイヴァリットに情熱を注いだロックをやっていた頃がこの頃だ。

50代はサイモン・ダインの3作の印象が強い。力強い相棒を得て、自分の中での新たな方向性を切り開いた時期だ。ただ、自由にやれる文仕事も緩くなりがち・・・俺の印象だけど。

アラ60歳の時期は、冷静にコントロールしながら柔らかいポップな音と昔からのロックな音をかけわせているように感じる。全体を俯瞰しやれてるというか。

ということで進化し結果も出し続けているウェラーは凄い。
個人的にはこれからウェラーの混迷期に突入するが、その先には達観期があると思うと気迫を込めて突入していこうと思う。
たまにこの表に戻って自分の立ち位置も確認したい。

ポール・ウェラーのソロ16作のアルバムランキング!

ソロ16作のレビューを終えて、自分の尺度でアルバム順位付けしてみた。

ウェラーの30年超のソロの歴史は、大枠で3期にわけられる。ブレンダン・リンチ期、サイモン・ダイン期、その後(ジャン・スタン・カイバート)だ。
サイモン・ダイン期に個人的にはウェラーから一時離れたが、UK界隈で最も評価が高いのはこの時期だったりしてよくわからない。
自分のやりたいことと作品の完成度が高いレベルで重なっているのは、アラ60期の作品だと思う。ブレンダン・リンチ期には無いオリジナリティとセンスが感じられてホント良い。
けど、プロダクションが素晴らしく、緊迫感をしっかり伝えるワイルドウッド〜スタンリーロード〜ヘヴィソウルの3作はやっぱり凄えと思います。

16 Sonik Kicks

ウェラー史上最もアグレッシヴで、好きな人も多い作品。個人的にはメロディの質が低く、最もバランスを欠いた完成度の低いアルバムだと思う。ウェラーとサイモン・ダインのコンビの最終作。完成後、ウェラーも思うところがあったのではないか。サイモンと組んだものは投げやり感があってあまり好きではない。
この作品で一旦ウェラーから離れた。

15 Wake Up The Nation

サイモン・ダインと組んだ作品で幅広い曲調、アレンジも大胆。一方でこれも繊細さを欠き完成度が低い。

14 True Meanings

方向性を模索していたウェラーが作った年齢相応の落ち着いた作品。メロディ、サウンド双方にキレを欠いていて、レコード会社や周りから言われて方向性を決めたような印象を受ける。ぶっちゃけつまらない。この路線がこの作品だけで終わってよかった。

13 Studio 150

初期のクラシック路線ににつなっていたタイミングでのカバーアルバム。変化球なアレンジが多く、聴いててあまり楽しくない。初期のBサイドで良い感じの選曲でストレートなカバーをやっていて、それがとても良かっただけに結構期待していたが完全に裏切られた。
ウェラーはリスナーとしても優れているので、リスペクト満載の直球カバーアルバムを作ってほしい。

12 22 Dreams

メディアでの評価が高く、中期ウェラーの代表作によく挙げられるが、個人的には中途半端な印象しかない。そこそこの曲のみで、インパクトの強い佳曲が無い。ウェラーと一緒に森を彷徨っているような印象の作品。要は掴み所がない。なんとなく聴く分にはまあまあか。それ以上ではない。曲数を絞れば印象が変わるのかも。

11 Paul Weller

ソロデビューアルバム。個人的に、リアルタイムで聴いていない唯一の作品。ということであまり思い入れが無い。他の作品にないジャジーな感触がちょっと苦手。その後に続くロックよりの曲はかっこいい。
 

10 Heliocentric

初期のクラシックロック+R&B路線の過渡期に出た作品。ブレンダン・リンチのプロダクションの賞味期限が切れていて、独特の音処理が減りシンプルな曲が増えた。良い曲もあるが、マンネリを恐れてかソングライティングが不発。

9 Illumination

初期のダッドロック路線から、新たな方向性を見出した。サイモンダインと組んだ中では一番良い作品。

8 As Is Now

ジャン・スタン・カイバートと組んだわかりやすいロックアルバム。ウェラーのソロの中では一番おすすめし易い作品だと思う。シンプルでポップなロック曲が詰まっている。ゲストも豪華だ。

7 Heavy Soul

大成功したStanley Roadの次でプレッシャーもあったと思う。ライブ感のあるラウドなロックアルバムだ。ハードなギターとメロディアスな曲のハイブリッドで、リアルタイムで聴きまくった。長らくこの作品が自分作品が自分にとってのポールウェラーだったので、その後他の路線を受け入れられずにいた。損してた。

6 A Kind Revolution

As Is Nowをアップデイトしたような作品だが、キレとやる気はこっちの方が上。余裕とセンスを感じる秀作。

5 On Sunset

60代のウェラーの傑作。家内制手工業的なバンドとの良い関係が伝わる。多く無い音数、残った音のセンスが抜群。序盤3曲の展開も素晴らしく、スタンリーロードのその先を60代の爺さんが切り開いた。

4 Saturns Pattern

Sonik Kicksで離れた後だけにしっかり聴いたのはごく最近の、ジャン・スタン・カイバートと組んだ復活作。勢いではなくセンスの良さで魅せる。駄作「True Meanings」を除く以降の秀作連発の礎となった重要作。

3 Fat Pop

現時点(2023年)での最新作で後期ウェラーの集大成ともいえる大傑作。培った音楽性を、類まれなるセンスで無駄を削ぎ落とし、ポップに仕上げた一枚。やや細くなった声がポップな音にマッチする。

2 Wild Wood

90年代序盤の低迷から見事復活した傑作。緊張感あるクラシックロックサウンドが最高にかっこいい。ウェラーのソングライティングも絶好調。モッズサウンドの代名詞のような一枚だ。

1 Stanley Road

ポール・ウェラーの最高傑作は、やっぱりこれ。今回改めて凄さを再認識した。主役はもしかしたらブレンダン・リンチのプロダクションかも。ライヴ感ある音作りが優勝。

Paul Weller – Fat Pop 

2021年発表。コロナ禍に作成された。2作連続の全英1位。
長いキャリアの中でも最も丁寧に作られた作品のひとつじゃないか。メロディと、アップデイトされたウェラーサウンドの水準がむちゃくちゃ高い。血潮滾るロックであり、職人的な「ポップ」である。両面において最高峰の作品だ。

プロデュースはウェラーとの相性が非常に良いJan "Stan" Kybert。スタンリーロード期のライブ感あるワイルドなサウンドと比べると、非常に親密で温かい音作りになっていて、これが聴いていると非常にハマる。この人とのコラボにハズレはない。サウンドはいつものウェラーチームで、温かい音からチームワークの良さが伝わってくる。
 
 
プロデュースはウェラーとの相性が非常に良いJan "Stan" Kybert。スタンリーロード期のライブ感あるワイルドなサウンドと比べると、非常に親密で温かい音作りになっていて、これが聴いていると非常にハマる。この人とのコラボにハズレはない。サウンドはいつものウェラーチームで、温かい音からチームワークの良さが伝わってくる。

エレクトロなかっこよいサウンドでスタートする「Cosmic Fringes」でアルバムの成功を確信、ギターサウンドがかっこいいリア・メトカーフとのデュエット「True」、ファンク的なサウンドとトリッキーなベースラインがかっこいい洒落たタイトルナンバー「Fat Pop」、極めてブリットな素晴らしいメロディを持つ娘リア・ウェラーとの共作(素晴らしい曲!)「Shades Of Blue」、浮遊感あるメロディがストリングスとうまく絡む名曲「Glad Times」、スタジオで一発録りされた軽快なファンクナンバー(このアルバムで一番好きだ)「Testify」、抑えを利かせたボーカルと間奏のサックスとギターがかっこいい「In Better Times」、名曲だらけだ。アルバムは、ウェラーの片腕スティーヴ・クラドックとの共作「Still Glides The Stream」(しびれる!)で幕を閉じる。

ウェラーの喉は、60歳を過ぎてから少し枯れてきてるが、それが新たな表現に繋がっている。通常のアーティストの場合、枯れてくると、ブルースとかジャズとかアンプラグド的な方向に進みがちだ。特にウェラーは、ソロデビュー後しばらくR&Bやソウル色の強い渋いロックをやっていたため、そっち方向に進むものだと思っていた。しかし、還暦を過ぎたオヤジが選択したのは「ポップ」。それもこの完成度。40代のウェラーを観ていた人が今のこの音をどれだけ想像できたか。最高。ほんとかっこいい。

Paul Weller – On Sunset

2020年、コロナ騒動の最中にリリースされたソロ15枚目の作品。
「As Is Now」「Saturns Pattern」など、バランスが取れた傑作で組んだJan Stan Kybertがプロデュースを担当。
達観した爺を演じた前作「True Meanings」と比べ、ウェラーらしいメロディや幅広い音楽性が復活し、ウェラーの歌声も年齢相応の渋さと演歌にならないポップさの二面性を兼ね備えた、キャリア屈指の完成度を誇る優れた作品だ。
スタイル・カウンシル時代の相棒、ミック・タルボットがボ・ディドリーのビートを下敷きとした小粋な「Baptiste」など数曲でハモンドオルガンを弾いているのも話題になった。

これまでのキャリアでチャレンジした様々なジャンルの音楽を、シンプルながら効果的な音の配置と音響でフューチャーソウル的にアップデイト、そして曲自体の完成度が非常に高く、何度も聴けるアルバムになっている。ウェラーの代名詞的なパンク的な「FIRE」を直接感じる曲は無いが、中に秘めた音楽的な野心は、しっかり燃え上がっているのがわかる。

静かに始まり捻くれていく「Mirror Ball」、ビートが心地良いご機嫌な「Baptiste」、ウェラー流フューチャーソウルの金字塔「Old Father Tyme」、落ち着いたトーンで達観したボーカルに静かな炎を感じるアルバムを代表する名曲「Village」、エレクトリックとR&Bの高い次元での融合「Rockets」など、キャラがたった良曲だらけだ。

ジャケットの曖昧な雰囲気が正直なんとも言えないが、ウェラーの複雑な心境を示したものなのだろう。
還暦のウェラーが年齢相応の落ち着きとモダンな感性を併せ示した大傑作だ。

ポーグスのシェインと俺

ポーグスのシェインが亡くなった。

脳炎で入院し集中治療を受けていたが、退院した」なんて報道があった最中だった。65歳。

 

ポーグスのライヴは2回観ている。どちらも自分の中でインパクトの強い音楽体験だった。

 

まず、ナラさんの結婚式の後、20時頃駆けつけた2006年の朝霧JAM

マイケル・フランティのアゲまくる、迫力ある演奏の後、だらだらシェインが出てきたのだが、想定以上にパンクな演奏とテンポの中で、明らかにアルコールが入りまくっているシェインのユルい歌と存在のギャップが激しくて、微妙に酔いが醒めつつ合った俺は全然入り込めずにいた。

「これはいかん」と慌てて呑み直し、ぐでんぐでん寸前になったところで、ようやく音が体に入ってきて、曲が進むごとにヘロヘロになるシェインと同期することができた。「このままずっと続けいてくれ」と思った頃に演奏終了。

12時近くまでやっていた。多分朝霧JAM最長じゃないか。最近は10時で終わるようになった。

今思えば朝霧のあの雰囲気と、マイケル・フランティの後という素晴らしい状況、更に今や高齢化した朝霧のオーディエンスが体力気力共にみなぎっていた時期だったということ、バンドを取り巻く最高の環境が揃っていたステージだった。俺の体内のアルコール調整は失敗していたけど。

 

2回目は2014年のフジロック


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日曜日のクロージングアクトとして登場。この日のフジロックは朝から雨で、ぱっとしない天気だった。フレイミングリップスジャック・ジョンソン→クロージングアクト、という流れ。リップスは相変わらずの圧倒的なステージだったが、ジャック・ジョンソンはやっつけっぽい緩すぎる演奏で、グリーンに広大な隙間があった。

ポーグスは確か24時頃からのステージだったと思う。ジャックのときにはいなかったオーディエンスが前の方に集まり、ポーグスに対する愛を強く感じた。オーディエンスはへとへとなのにみんな元気で笑顔だ。

ただ、出てこない。バンドが出てきてもシェインが登場しない。堪らずスパイダー・ステイシーが「またかよクソが!」とか言いながらちょっと歌ったと思う。

更に相当時間が経って、ようやくボロボロのシェインが登場。朝霧から10年も経っていないが、相当老けていて、老人に見えた。一段とガラガラな声で数曲歌い、ステージは終わった。歌はこれ以上なくヘロヘロ。一番盛り上がったのは登場したときだったと思う。まさかの出オチ。酒は怖いな。

 

どっちのステージも正直音楽的にはいまいちで、プロフェッショナルを感じなかったが、体験としてのインパクトは絶大。未だに風景を思い出す。そして誰もシェインに対して文句を本気では言っていない。苦労人のスパイダー・ステイシーですら。カリスマというか、逃げ場を探し続ける(酒を飲む)人独特の愛嬌というか。亡くなったニュースで、寂しくなった人が多いのはそういうことだと思う。

Paul Weller – True Meanings

18年発表。前作から約1年、短いインターバルでリリースされた。
アンプラグドっぽいアレンジで、内省的な曲が多く、ウェラーとしては異色作だ。曲によってはストリングスが絡んだり、ジャジーなナンバーもある。60代となったポール・ウェラー、年齢相応の落ち着きと、渋さを纏った作品だ。UK2位。

「Bowie」はタイトルそのまま、デヴィッド・ボウイに捧げた曲。シンプルな歌詞でボウイに感謝する。なかなかグッとくる優しい歌だ。

個人的にはキャリアの中で最も心を揺さぶられなかった作品のひとつだ。
リラックスした感じ、レイドバックしたような感じが正直合わない。爺っぽい音楽でも、気持ちが乗っていれば良いのだが、「HEAVY SOUL」が感じられないのだ。00年代のキレのないカバーアルバム「Studio 150」と同じような緩さ、脇の甘さ。
ウェラーに求めるのはこれじゃない。前作が洒落たロックアルバムだったので、どうしてこの路線に進んでしまったか残念でならない。

THE JAMの「カーネーション」「イングリッシュローズ」が好きな人には堪らないアルバムじゃないか。

Paul Weller – A Kind Revolution

2017年発表。ソロ13枚目。英国5位。

前作のセッションで残った2曲「Woo Sé Mama」「One Tear」はジャン・スタン・カイバートの共作で、他のクレジットはウェラーのみ。更に久しぶりにセルフプロデュース。マルチプレイヤーのアンディ・クラフツ(the moons)、ドラムのベン・ゴルドリエらお馴染みのウェラーチームが中心になってプロダクト。

セルフプロデュースの場合、質が落ちるアーティストもいるが(典型的なのがマッカートニー御大)、前作と同等、あるいはそれ以上の内容になっているのが頼もしい。
ソウル、R&B、ゴスペル等、自身のルーツにサイケデリックなエレクトロニック風味を加えた感じ。ドクター・ジョン的な雰囲気があるものも含まれていることから、スタンリーロード期の面影さえ感じられる。

アルバムは、成熟したお洒落なソウルナンバー「Woo Sé Mama」で幕を開け、この時点で成功を確信できる。「Long Long Road」はウェラーの十八番のソウルバラードで、スタンリーロード期にタイムスリップしたようだが、歌声はバージョンアップされている。「She Moves With The Fayre」はロバート・ワイアットが歌とトランペットで参加し、これもサイケ風味がブレンダンの音作りを思い出させる。「One Tear」はボーイ・ジョージが参加。同窓会みたいな賑やかさがあるファンクナンバーだ。「The Cranes Are Back」は洗練されたゴスペル。かっこいい。

政治的なメッセージは込められていないようだが、アルバム全体から混迷する世界への怒りも(なんとなく)感じられる。気迫と、ベテランとしての成熟、気概、一箇所に留まらない音作り、これらが高いレベルで融合している作品だ。
やはりサイモン・ダイン期の混沌、完成度の低さが勿体ないと思ってしまう。

Paul Weller – Saturns Pattern

15年発表のソロ通算12枚目。

ベストアルバムを挟んだこの作品。変化があった。00年代に入ってから出番が多かったサイモン・ダインではなく、「As Is Now」で組んだJan "Stan" KybertとAmorphous Androgynousがウェラーと共にプロデュース。作曲のパートナーも、サイモン・ダインからJan "Stan" Kybertに替わった。

ポール・ウェラーはコラボレイター次第で方向性が替わるチェンジングマン。JAMの他2名、スタカンのタルボット、ソロ初期のブレンダン、中期のサイモンダイン。パートナーの影響を反映しながらサバイブしてきた。今作、カイバートとのコラボにより、05年ぐらいからのハズレ曲の多さが改善され、ソングライティングの質がぐっと高まった。個人的にはサイモン・ダインとの共作曲がいまいち合わなかった(アイデア勝負の曲が多い)ので、この変化は諸手を挙げてウェルカム。
ポール・ウェラーはコラボレイター次第で方向性が替わるチェンジングマン。JAMの他2名、スタカンのタルボット、ソロ初期のブレンダン、中期のサイモンダイン。パートナーの影響を反映しながらサバイブしてきた。
今作、カイバートとのコラボにより、05年ぐらいからのハズレ曲の多さが改善され、ソングライティングの質がぐっと高まった。個人的にはサイモン・ダインとの共作曲がいまいち合わなかった(アイデア勝負の曲が多い)ので、この変化は諸手を挙げてウェルカム。

景気の良いウェラー流王道ロックナンバー「White Sky」で幕を開け、軽快なリズムと広がりのあるメロディーが素晴らしい「Saturns Pattern」、お得意の所信表明的な名曲「Going My Way」、浮遊感のあるメロディも良いが音像も素晴らしい「I’m Where I Should Be」・・・良い曲ばかり。

10年代のウェラーの作品では一番完自分の耳に合う。
良いメロディと、長いキャリアで辿り着いたウェラーの歌、そして時代を踏まえたサウンドのバランスが非常にハマってる傑作だ。

タイトルがいまいちピンとこなかったり(困難を乗り越えるって意味?)、ジャケットがロック的では無いので、入り込みにくい作品だと思う。内容とのギャップは相当デカい。損している。

Paul Weller – Sonik Kicks

2012年発表。全英1位。日本ではメディアに取り上げられることが少なくなったウェラーだが、実はUKチャート上ではアルバムが連続で1位を獲得し90年代以上に成功している。

このアルバムにはブラーのグレアム・コクソンノエル・ギャラガー、元ストーンローゼズのアジズ、ショーン・オヘイガンらが参加。プロデュースはウェラーとこの頃の片腕サイモン・ダインで、このコンビのピークといえる作品だ。


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2010年から禁酒をスタートしたウェラー。

禁酒が、沈み込むようなサウンドから開放的でアッパーな音に変貌していった要因のひとつかもしれない。

ジャケットから感じるカラフルさがアルバムのトーンに繋がっている。当時のノエル・ギャラガーのソロにも近いハンマービートとUKギターロックを組み合わせたようなサウンド。その上で結構やりたい放題やっている。

 


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ウェラーのこれまでのキャリアの中だと、音の質感や歌い方、曲調が「サウンド・アフェクト」「ザ・ギフト」に近い感じ。JAM後期もモッズやパンクから開放され自由にやっていた。

00年代後半から10年代にはかけてのウェラーは、スティーブ・ホワイトのリズムから自由になったことで、60年代〜70年代のモッズやビートルズ、スティーヴ・マリオットらの枠から飛び出し、自分の好きな音を思うままに鳴らしている。多分、このモードこそが本来のウェラーなんだろう。


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ただ、個人的にはこのアルバムの落ち着きのない音が合わないのと、アイデア一発の曲作りの甘さが気になって仕方ない。家族に捧げられた「Be Happy Children」ぐらい丁寧に作ってほしい。

JAMから聴いている永年のファンには合う作品かと思う。

Paul Weller – Wake Up The Nation

2010年発表、10枚目のソロアルバム。全英2位。

前作でまたひとつキャリアの頂点を越えたウェラー。成功したスタイルをあっさり捨て去り、長いキャリアの中でも抜群にアグレッシヴなアルバムを完成させた。

元ジャムのベーシスト、ブルース・フォクストンとの共演も話題となった。ELOのベブ、ケビン・シールズらが参加。前作から出番が少なくなったスティーヴ・ホワイトはついに参加していない。これまでのウェラー独特のリズム感が放棄されたのは、このあたりに原因があるのかもしれない。

プロデュースは中期以降おなじみとなったサイモン・ダインで、全ての曲をポール・ウェラーと共作している。

父でマネージャーだったジョン・ウェラーが亡くなり、自身も50代を越え何か思うことが合ったのかもしれない。
イデア一発、曲の整合感とかバランスとか無視したような曲が多く、バンドで揉んだ感じはない。また、長年ウェラーの特徴となっていたトラフィックスモール・フェイセズといった先人たち、ビートルズの影響さえも表面的には感じることが難しい。
そうすると駄作か、となりそうだが、アグレッシヴなトーンで統一されウェラーとしての実験性に富んでおり面白い作品になっているのが流石だ。

前作に引き続き沢山の曲が収められているが、なかでもウェラーのボーカルとメロディが良い「No Tears To Cry」、スタジアムアンセム系の「Find The Torch, Burn The Plans」ケヴィン・シールズとのコラボ「7 & 3 Is The Strikers Name」が際立って良い。
ただ、曲が多すぎる感じがする。10曲ぐらいに絞れば印象が違っていたかも。

なぜかspotifyに入っていない、謎のアルバムでもある。

Paul Weller – 22 Dreams

08年発表のソロ9枚目。

ウェラー初の2枚組(LP)。ノエル・ギャラガー、ジェム・アーチャー、グレアム・コクソン、リトル・バリー等幅広いゲストも話題になった。

 

プロデュースはポール・ウェラーとサイモン・ダイン、スティーヴ・クラドックら。ソングライティング、歌声、プロダクション、全てにおいて肩の力が抜け、自然体のポール・ウェラーを堪能できる00年代の傑作で、UK1位。評論家のウケも良かった。

 

音作りにサイモン・ダインが入っているため、全体的に整理されたクリアなサウンドだ。90年代から00年代前半のサウナのもわっとした空気のような熱苦しさはなく、河原の側道でのランニングぐらいの熱量で統一されている。曲の輪郭がくっきりと分かる感じ。


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2枚組ということもあり、ポール・ウェラーの「ホワイトアルバム」「メインストリートのならずもの」とも言える。ひとつひとつの曲が粒揃いで、全ての時期のポール・ウェラーを感じることができる。70年代後半からのウェラーのキャリアの総括になっていて、つまり「UKロックとは」の答えのような作品だ。そうそう、ジャムのスティーヴ・ブルックスが参加したのも話題になった。


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両A面シングル「All I Wanna Do (Is Be With You)」、「Have You Made Up Your Mind」はアルバムの中でも出来の良い曲。ソロ初期のウェラーを軽やかにした感じだ。リラックスした歌声と広がりを感じる演奏が素晴らしい。


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個人的には長年地味と感じていた作品で聴き込めていなかった。派手だった前作「AS IS NOW」との落差が大きく、アルバムに入り込むきっかけの曲が見つからなかった。アルバム発売から10年以上経ち、それぞれの曲が自然に入ってくるようになってようやく良さがわかった。08年当時の余裕がない生活環境も影響していたかも。今は良い作品だと思う。