solid bond

never a dull moment

ポーグスのシェインと俺

ポーグスのシェインが亡くなった。

脳炎で入院し集中治療を受けていたが、退院した」なんて報道があった最中だった。65歳。

 

ポーグスのライヴは2回観ている。どちらも自分の中でインパクトの強い音楽体験だった。

 

まず、ナラさんの結婚式の後、20時頃駆けつけた2006年の朝霧JAM

マイケル・フランティのアゲまくる、迫力ある演奏の後、だらだらシェインが出てきたのだが、想定以上にパンクな演奏とテンポの中で、明らかにアルコールが入りまくっているシェインのユルい歌と存在のギャップが激しくて、微妙に酔いが醒めつつ合った俺は全然入り込めずにいた。

「これはいかん」と慌てて呑み直し、ぐでんぐでん寸前になったところで、ようやく音が体に入ってきて、曲が進むごとにヘロヘロになるシェインと同期することができた。「このままずっと続けいてくれ」と思った頃に演奏終了。

12時近くまでやっていた。多分朝霧JAM最長じゃないか。最近は10時で終わるようになった。

今思えば朝霧のあの雰囲気と、マイケル・フランティの後という素晴らしい状況、更に今や高齢化した朝霧のオーディエンスが体力気力共にみなぎっていた時期だったということ、バンドを取り巻く最高の環境が揃っていたステージだった。俺の体内のアルコール調整は失敗していたけど。

 

2回目は2014年のフジロック


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日曜日のクロージングアクトとして登場。この日のフジロックは朝から雨で、ぱっとしない天気だった。フレイミングリップスジャック・ジョンソン→クロージングアクト、という流れ。リップスは相変わらずの圧倒的なステージだったが、ジャック・ジョンソンはやっつけっぽい緩すぎる演奏で、グリーンに広大な隙間があった。

ポーグスは確か24時頃からのステージだったと思う。ジャックのときにはいなかったオーディエンスが前の方に集まり、ポーグスに対する愛を強く感じた。オーディエンスはへとへとなのにみんな元気で笑顔だ。

ただ、出てこない。バンドが出てきてもシェインが登場しない。堪らずスパイダー・ステイシーが「またかよクソが!」とか言いながらちょっと歌ったと思う。

更に相当時間が経って、ようやくボロボロのシェインが登場。朝霧から10年も経っていないが、相当老けていて、老人に見えた。一段とガラガラな声で数曲歌い、ステージは終わった。歌はこれ以上なくヘロヘロ。一番盛り上がったのは登場したときだったと思う。まさかの出オチ。酒は怖いな。

 

どっちのステージも正直音楽的にはいまいちで、プロフェッショナルを感じなかったが、体験としてのインパクトは絶大。未だに風景を思い出す。そして誰もシェインに対して文句を本気では言っていない。苦労人のスパイダー・ステイシーですら。カリスマというか、逃げ場を探し続ける(酒を飲む)人独特の愛嬌というか。亡くなったニュースで、寂しくなった人が多いのはそういうことだと思う。