solid bond

never a dull moment

George Harrison - Gone Troppo

1982年にリリース。


この時期のジョージは映画製作やカーレースに夢中になっており、音楽への関心が薄れてた。アルバムはほとんど宣伝されずにリリースされ、英国ではチャート入りせず評論家たちからも酷評された。次の復活作と評される「クラウドナイン」までには5年の歳月を要した。

しかしながら、今聴くと、ジョージの「怠惰な日常からの脱却と人生を楽しむ」圧倒的にポジティヴな個性が、リゾート音楽と交差し結実した、唯一無比の「気楽なロックアルバム」だと思う。ジョージ独特の多幸感に溢れた雰囲気が存分に楽しめる。

ソロキャリアの中期では、宗教的な要素が強く現れる時期もあったが、このアルバムでは別の次元に到達した感じ。聞き手はリラックスしてアルバムの世界観に浸ることができる。

個人的には、アルバムのジャケットの雰囲気も好きだ。

 

以下はアルバムの曲についての感想。

Wake Up My Love: ジョージらしい多幸感に満ちた曲で、効果的にシンセサイザーの音が使われている。リゾート地で太陽が照りつけるイメージを連想させる。

That's The Way It Goes: スライド・ギターが冴える明るい曲。のんびりとしたジョージらしい曲調が楽しめる。

I Really Love You: オールディーズの雰囲気が漂う、おしゃれなリラックスナンバー。

Greece: 柔らかいギターの音が多幸感に溢れた曲。

Gone Troppo: ジョージ自身が作った造語で、明るくポップ。アルバムを象徴する陽気な曲。

Mystical One: クーラ・シェイカーの曲みたいなタイトルだが、インド的な要素は無い。スライドギターが印象的なポップなナンバー。

Unknown Delight: アルバムの中でテンポが遅く、一段と脱力。ギターと歌声が美しく響いている。

Baby Don't Run Away: 手抜きっぽい曲だが、メロディは素晴らしく、女性ボーカルの使い方も巧み。

Dream Away: オッサンになった心情が感じられる、リラックスした雰囲気の曲。楽しげなムードが広がる。
Circles: 他の曲とトーンが異なり、現実世界に戻ってきたような感じ。このアルバムでは唯一、ビートルズ的な要素が強く感じられる。締めくくりとして相応しい曲。

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「Gone Troppo」は、ジョージのキャリアの中でも際立って人間性が出た作品で、リラックスした音楽スタイルやポジティヴで前向きな力強さを堪能できる。これからの季節に最高だ。