solid bond

never a dull moment

スティーヴ・マリオットがスモール・フェイセズ脱退後にピーター・フランプトンと組んだバンドがハンブル・パイだ。しかし、マリオットとフランプトンのコンビは長続きせず、71年10月にフランプトンはバンドを去る。彼が去ったことにより、バンドの方向性がはっきりし、72年のアルバム「smokin'」はビルボードでも成功を収めた。「Eat It」はハンブル・パイが最も輝いていた73年の二枚組アルバムである。

このアルバムは、レコードの面によって四つに分かれた構成になっている。
A面にあたる4曲目までがマリオット作のバンドサウンド。B面にあたる5曲目から8曲目までがレイ・チャールズの曲を含むカバーで、マリオットの黒っぽいボーカルがブルージーだ。C面にあたる9曲目から12曲目はトラッドやカントリー風味の曲が多く、叙情的な雰囲気。D面にあたる13曲目から15曲目はライヴ演奏で、ストーンズの「honky tonk women」カバーが素晴らしい。「イギリスの重爆撃機」と呼ばれたマリオットのインパクト強いヴォーカルが最高だ。

スティーヴ・マリオットは、スモール・フェイセズ時代から音楽性にムラがあり、自分自身が何をやりたいのか分かっていない感じを度々受けるのだが、このアルバムはあえて四つの方向性を明示することで、マリオットの幅広い音楽性をわかりやすく表現出来ていると思う。バンドのサウンドも、ソウルブラザーと化したマリオットにあわせ、滑らかで重厚な力強いサウンドを作り出している。そこにはスモール・フェイセズが持っていたいなせでこじゃれた雰囲気は全く見ることが出来ないのだが、かつての仲間(FACES)がアルコールにまみれ、緩い音を出し続けていた時代に、これだけ緊張感や迫力に溢れた音を作っていたことを、もっと高く評価していいと思う。スティーヴ・マリオットという人間の志の高さが、最高の音として表現された表も裏もソウルフルなアルバムだ。