solid bond

never a dull moment

ルーファス・ウェインライト。父はラウドン・ウェインライトⅢ、母はケイト・マクギャリグル。ヴァン・ダイク・パークスの秘蔵っ子として、ワーナー黄金期を築いたレニー・ワーロンカー率いるドリーム・ワークスから98年デビュー。
このアルバムが3作目。「I AM SAM」サントラでの活躍も記憶に新しい。
出す作品全て傑作の彼だが、新作「WANT ONE」は、常人レベルを遥かに越えた凄まじいアルバムに仕上がった。

ゲイであり、麻薬の常習者。入ってくる噂は退廃的な生活を思わせる。おそらくギリギリの精神状態で生きているのだろう。そして、常に「今」から逃避し、心を桃源郷へ運びたいと考えているに違いない。このアルバムは、その「心の桃源郷」即ち天国から降ってくる、優しい光、愛だ。はちゃめちゃ温かい。その温もりがリアル過ぎて拒否感を憶えてしまうヒトもいるかもしれない。しかし、一度心を広げ、この音に身体を委ねれば、ルーファスの心に描かれた温かい世界の心地良さを知ることが出来る。

メロディーは音符と音符の間がまるでないかのように自然に泳ぐ。まるで生きているかのようだ。「天国から降ってくるメロディ」、ホント言い過ぎではないと思う。そして、そのメロディを綴るルーファスの声は、リアルであり、幻想的であり、そして耽美的だ。比べるものを他に例えられない。

ロックとは妄想だ、と何かの本で読んだ。思い込むことが大事だ、と。
その意見全てが正しいとは思わないが、表現者にも聴く者にも必要な要素の一つであると思う。
このアルバムはその妄想が極限まで高められたアルバム。大傑作。