「午前10時の映画祭」で、40年の時を経て初めて1986年公開の大ヒット映画「トップガン」を観た。
86年当時、トム・クルーズといえば、俺ら田舎の小学生ですら知っている大スターだった。この映画も大きな話題になっていたが、当時からひねくれていたんで、皆知っている映画をわざわざ観る必要はねえや、と、ずっと観ないで時間が経ってしまった。正直なところ、「カネがかかっている」だけあって、やはり面白い。ストーリーは淀みなく進み、ほとんどのシーンに無駄がない。予備知識がなくとも、話は予想通りに進む。破綻のない予定調和。観終わった後に残るのは、計算され尽くした爽快感だ。
映画の主役は、トム・クルーズ演じるマーヴェリックだけではない。海軍の全面協力によって実現した、本物の戦闘機による空中戦は、圧巻だ。巨大なスクリーンで観るF-14トムキャットの飛行は、轟音と相まって、目を奪われた。しかし、スピード感が凄まじく、正直なところ、空中戦の状況をスクリーン上で把握できなかった。
グースが何で亡くなったのか正直よくわからなかった。気づいたら隣の席のおばさんが号泣していた。
「アメリカ海軍のプロパガンダ映画」と揶揄されるのも頷ける。実際、公開後には海軍への志願者が殺到したという。映画が描く「戦い」は、ゲームのようで、危険な作戦に参加してもパラシュートで脱出できる感じで描かれている。作品の描写は、現実の戦争の悲惨さを覆い隠し、安易なイメージを植え付けかねないと感じた。
若き日のトム・クルーズは、画面上で文字通り輝いている。そのニヤニヤした笑顔は、今の彼が持つ嫌味がなく、非常に爽やかだ。「チビっぷり」も、周りの俳優たちが大柄なためか、余計に際立っている。レイバンのサングラスも、マッチョな肉体を披露するバレーシーンも、カワサキで疾走する姿も・・・全てが絵になる。
脇役陣も豪華だ。
マーヴェリックのライバル、アイスマンを演じたヴァル・キルマーは、当時はまだ地味な印象だったかもしれない。だが、その後の「ドアーズ」や「バットマン フォーエヴァー」での活躍した。
グースの妻キャロルを演じたメグ・ライアンは、チョイ役の「地味な女優」だ。彼女が後に「ラブコメの女王」として一時代を築くとは思えない。
ヒロインのチャーリーをはじめ、どのキャストも軍隊のトップクラスっぽい品があり、映画全体も良くも悪くも品がある。かっこいい。
「シンプル・イズ・ベスト」。余計な深読みや複雑な背景は一切なく、ただひたすらに、パイロットたちの青春と成長が描かれる。上映時間も長くなく、飽きる前に終わる。作品の単純さこそが、40年という時を経てもなお、人気を維持し続ける理由だと思う。