フジロックフェスティバル2025。今年も金曜日、7月25日に参加した。
発表時は「今年のトリは例年に比べて地味だな」と思った。ここでも「小粒だ」と書いていろいろご指摘いただいたが、今年のトリのアクトは、(自分の感覚では)これまでのフジではホワイトのトリやグリーンのトリ前、ヘブンのトリぐらいの格付けのアーティスト。それは間違いない。
また、明らかにUKやUSのアーティストが減り、邦楽勢が増えた。これまでのフジロックから、信念のレベルまで立ち返って、舵を切り直した感じがある。スマッシュの株主が半数入れ替わったくらいのインパクトがあった。
色々噂もあったし、フジが結構追い詰められていたことは間違いない。大きなチャレンジに出た。
コロナ以降のフジロックは、毎回がっかりするほどに衰退していた。メインのグリーン、レッドマーキー、ホワイトはともかく、その他のステージや周辺の導線、トイレの劣化が目に見えて進み、何よりお祭りのような活気が年々失われていた。かつてはしっかり隠されていた“裏側の現実感”のようなものも、近年は隠し切らず、目に見えるようになった。
ここ数年、正直、「楽しかったものにも終わりは来る。最後を見届けよう」という気持ちで苗場に通っていた。
結論として、今回のスマッシュのチャレンジは成功した。
自分が参加したのは一番集客が難しい金曜日だったが、夕方以降は丘の付近まで空白がないほど人が入っていた。ここ数年にはない入りだった。それでもまだ、余裕をもって休めるくらいの混雑度ではあったが。
山下達郎が出演した土曜は、2000年代前半のレッチリやレディオヘッド並の混雑だったそうで、動員はかなり盛り返したと思う。
アルコールやその他いろんな匂いが混じった、あの雑多な活気は戻っていなかったが、逆にストイックに音楽を楽しむ熱気は確実に増していた。
自分も含め、酒を飲まない人が増えた印象がある。飲むとトイレがキツいからだ。男性トイレが大幅に減った気がしたが、実際どうだったのだろう。奥地まで混んでいたので、水分補給には少し頭を使った。音楽をメインに楽しもうとすると、どうしても酒を減らさざるを得ない。自分はここ数年のフジでは15時以降は酒をやめている。
ラインナップを含め、今回のフジロックは要するに「邦楽ロックフェス」に近づいた。
トリ前に「ロッキンで各ステージのトリを張れるレベルのアクト」を並べて集客し、トリは洋楽勢でフジロックの色をぎりぎり残した。円安の状況もあり、懐事情を踏まえて無理をしないブッキングだったと思う。ただ、終わってみればスマッシュが相当熟考して呼んだのがよくわかる素晴らしいパフォーマンスばかりだった。
邦楽勢の格上げと合わせて、客層もロッキンなどに通っている層が増えた感じだ。これはロッキンが8月から9月に移った影響もあるだろう。新しい層がフジロックの思想やマナーを受け入れて定着してくれるかが今後の課題だ。こんなことを書くとまた「オールド層がうんぬん」と言われそうだが、ロッキンみたいに整えられた環境ではない分、必要なことだと思う。
自分としてはどうだったか。
夕方以降は楽しかった。グリーンやオレンジの演奏は熱かったし、深夜のルーキーやサーカス、パレスの雰囲気は相変わらず最高だった。ただ、昼間は正直きつかった。見たいアーティストが少なく、同じような人が多かったのか、ヘブンやオレンジがやたら混んでいて楽しみ切れなかった。
マナー面では、ボードウォークの一方通行を守らない人や、混んでいる通路にイスを広げて座る人が大勢いたりと、これまでのフジの文化は結構リセットされたと感じた。
50歳になる来年、どうするか。駐車場が取れたら行くかもしれない。フジロックでしか味わえない感覚がある。行けなくなるまでは行きたい。土曜のような混雑は無理なので、また金曜だけ参加するかもしれない。
以下、当日の備忘録。
朝は普段と同じルーチンで過ごし、出勤と同じ時間に家を出た。車のクーラーが故障していて、道中はなかなか厳しかった。途中、群馬と新潟の県境で蕎麦を食べたが、かなり値上げしていて驚いた。来年は別の店にしようと思う。12時半頃に予約していた駐車場に到着。峠あたりでゲリラ豪雨に遭い、車内で30分ほど寝てから会場へ向かった。
ビールを買って一人で乾杯。そしてレッドマーキー手前の林へ。ここは何度も渋谷陽一と会った場所で、数回話もした。今年は例年以上に人が多く、「渋谷ポイント」も人がいっぱいだったが、少し遠くから合掌した。全然想定してなかったが、ポロポロ涙が溢れ、しまいには号泣した。渋谷陽一の文章とかラジオとか、色々なものが頭の中で混乱を引き起こした。まあ、俺にとって神の一人だから…。
傍目には林に向かって合掌して泣いているビール片手のオッサン…変な光景だったと思う。
MARCIN(レッドマーキー)
ポーランド出身のアコースティックギタリスト。フラメンコとクラシックを基盤にした新しいパーカッシブスタイルの先駆者とのこと。確かに超絶技巧で、こういうのが昼間のフジロックらしい。
ATOMIC CAFE
他のステージの雰囲気が変わっても、ここだけは現状維持でホッとする。津田大介とジョー横溝が落合氏を囲んでトークしていた。「変えるなら自分が政治家になるのが近道」という落合氏の言葉は正論だと思った。外野から唾を飛ばしても何も変わらない。最近、ロックが政治の小道具にされている感じがして気持ち悪い。
BRAHMAN(グリーン)
オレンジやホワイト、ヘブンの居心地がいまいち(とにかく混んでいた)だったので、グリーンに戻った。ちょうどTOSHI-LOWが十八番の熱い語りをしていた。喋りが達者だし、政治家向きだと思うけど、そこまでやるつもりはないのだろう。途中で服を脱いで鍛え上げた身体を披露していて、相変わらずかっこいいパイセン。自分ももっと鍛えたいと思った。
HYUKOH & 落日飛車 Sunset Rollercoaster(グリーン)
てけしゅんが金曜の注目として挙げていた韓国と台湾の混合ユニット。Spotifyで聴いたときはそこまで響かなかったが、ライブはかなり面白かった。ふわふわしているが、所々に変わった音があり、形容しにくい唯一無二のサウンドだった。かつて日本が得意としていた折衷から新しいものを作り出す感じを、今はアジアのアーティストが自由に超えていく。欧米の観客も興味深そうに聴いていた。
Vaundy(グリーン)
グリーンはかなり混んできた。サウンドチェックから観ていたが、ガイドボーカル入りのテープを流し、ギターを被せて終わり。本番も同じような音で、どこまで生演奏しているのか正直疑問だった。ナルシスティックでいかにもJ-ROCKなMCには引いてしまった。「踊り子」を聴いてグリーンを離脱。「HYUKOH & 落日飛車」の生き生きした音の後だけに、落差が激しかった。去年のAwichの気合いとゴージャス感と比べると物足りなかった。
E.scene(苗場食堂)
苗場食堂からかっこいいR&Bが聴こえてきて、つい引き寄せられた。新潟を拠点に活動する「真琴」を中心としたユニット。10代の頃にルーキーに出ていたとのこと。ボーカルに惹きつける力があって、メジャー勢の気の抜けたパフォーマンスの裏でこういう演奏が聴けるのがフジロックの面白さだ。
Takamasa Ohkamiers(ブルーギャラクシー)
ふらふらしていたらブルーギャラクシーでDJが回し始めた。50年代〜60年代のモッズが好みそうなR&B。スピーカーの音も良く、30分ほど軽く踊った。こうしてあちこちで音が雑多に鳴っているのがフジロックの好きなところだ。かつてのメタモルフォーゼもそうだった。
Tycho(レッドマーキー)
優しいエレクトロニカ、またはポストロックという感じで家でもよく聴いていた。日本では「タイコ」と呼ばれたりしたが、本人が「ティコ」と言っているので解決。心地良い音でずっと聴いていたかったが、トリの場所取りのため5曲ほどでレッドマーキーを後にした。昔と比べるとレッドマーキーの音は格段に良くなった。ライブ後のインタビューで、スコット・ハンセンが闘病中だと告白していた。無理せず頑張ってほしい。
Fred Again..(グリーン)
グリーンで場所を確保して休んでいると、最前列の入れ替えでかなり揉めていた。「押さないでください、死人が出ます!」なんて声が飛ぶのも久々だった。その後、機材トラブルで開演が1時間以上遅れるとアナウンスがあり、Ezra Collectiveに流れる人が多かった。この待ち時間はキツかった。ドコモの電波も死んでいたし。
ライブは思っていた以上にロック感が強く、歌も多かったし演奏もしていた。パーティ的な盛り上がりというより、しっかりアーティストの表現としてのライブで、求めていたものとは少し違ったが深みがあって楽しめた。
The Panturas(パレス)
Fred Again..とパレスを天秤にかけて、パレスを選んだ。ルーキーアゴーゴーはまだサウンドチェックだったので、まずパレスへ。空調が強化されたのか、中の異様な熱気がなく快適だった。インドネシアのサーフロックバンドで、とにかく楽しいパーティサウンド。パレスはハズレがない。
外に出ると酒場から「Creep」が聴こえてきて、思わずニヤッとしてしまった。
雪国(ルーキーアゴーゴー)
毎年、サーカスの前にルーキーでひとつはバンドを観ている。今年は「雪国」。シューゲイザーで、勝手に青森出身だと思っていたが、多摩市出身の京さんを中心としたバンドとのこと。バンド名は川端康成から。日本では珍しくフォルセット多めのボーカルが新鮮で、音も純シューゲイザーで好みだった。若いバンドなので、いずれメインステージに立ってほしい。
SAKURA CIRCUS(パレス横)
毎年観ているサクラサーカス。今年はいつものお兄さんとチビッコではなく、姉さんたちが曲芸を披露し、最後はとにかく凄まじい勢いで回転していた。人が回るとなんであんなに盛り上がるのか…。おじさんたちが大喜びだった。
一時パレスが無くなった年もあったが、やはりフジロックの出口にパレスとサーカスは欠かせない。これがあるから「また来年も来よう」と前向きな気持ちで帰れる。
永井食堂のモツ煮定食を食べて今年のフジロックは終了。モツの量は少なめだったが、やっぱり旨かった。
翌朝4時に起き、10時前には帰宅。そのままサッカーを観に行って、普段の生活に戻った。