solid bond

never a dull moment

radiohead-KID A 優しく降る雨のような傑作。

00年10月発表。4作目のスタジオアルバム。

『OK Computer』で世界的な成功を収めた後、メンバーはスランプに陥る。ギターでの作曲に限界を感じたトムは、グランドピアノを前に試行錯誤を始める。アルバム制作の転機となったのは「Everything in Its Right Place」の誕生だった。ギターやドラムがうまく馴染まず、最終的にはバンドという形から距離を取って構築され、アルバム全体の方向性を決定づけた。

前作よりも、聴いたときの衝撃度合いは薄かった。田中宗一郎のレビューを初め、メディアは異色作として戸惑いながら取り上げていたが、俺はアルバムの世界にすんなり入れた。ジャズ的な構築を持つ「The National Anthem」の攻撃性には一瞬戸惑ったが、それ以外の楽曲はむしろポップで聴きやすかった。よく語られるような「ロックを終わらせた」といった評価には違和感がある。50年代からのクラシックなジャズやロックの延長線上で、最新のエレクトロニカやポストロック、アンビエントを吸収して作られた作品で、ロックはずっとそうやって進化してきた。歪んだギターの代わりにキーボードやビート、空間的なエフェクトを重視しながら、ロックバンドとしてのradioheadは生きている。限界が近づいていたバンド・サウンドの、可能性を更新した、というのが実感に近い。

「How to Disappear Completely」や「Motion Picture Soundtrack」などの楽曲は、表面的な音像こそ異質だが、構成やメロディはむしろ伝統的なものに近い。サウンドの刷新に注目が集まりがちだが、アルバムの核にあるのは明確なメロディと確かな構成力だ。グランドピアノを基点に再構築された楽曲群は、これまでのradioheadの中でも最も優しくわかりやすく響いた。音の印象は雨。しとしとと、優しく降り落ちる感じだ。

レディオヘッドはこの作品でポストロックやエレクトロに接近ギターロックバンドを卒業した。その形は、00年代以降のバンド像を決定づけた。トム・ヨークが影響を公言しているAphex Twinクラウトロック的な構築、あるいはマイルス・デイヴィス以降のジャズなど、様々な音楽を吸収したこのアルバムは、最終的には「バンドの作品」として成立しているところが最高だ。ビートルズが現代にいたらこういうアルバムを作ったかもしれない――そんな感じがする。

メディアでは「先鋭的」とされることが多いが、実際にはリスナーに対して非常に開かれたアルバムだと感じる。今聴いても楽しめるし、むしろこの作品の影響を、未だに感じることができる。00年代以降のロックを考える上で避けて通れない作品であり、何よりも「聴きやすい」名盤のひとつ。間違いなく、傑作だ