
フランツ・フェルディナンドの6枚目のアルバム。結成から20年以上が経ち、バンドの形は変わりながらも、その音楽的なエネルギーは衰えていない。現在はアレックス・カプラノスのソロ・プロジェクト的な色合いが強くなっているが、バンド名義での作品として、今作も非常に完成度の高いロック・アルバムに仕上がっている。
前作『Always Ascending』では、ダンサブルかつ浮遊感のあるアプローチが際立っていたが、本作はよりタイトでソリッドな作風。音のクリアさとビートの鋭さが際立ち、無駄のない「使えるロックアルバム」といった印象を受ける。メロディはわかりやすく、全体的に洗練されており、インディーバンドらしい粗削りな魅力よりも、プロフェッショナルな仕上がりを優先した作風になっている。
シングルカットされた「Audacious」「Night or Day」「Hooked」は、どれもフランツ・フェルディナンドらしいキレのあるリズムとキャッチーなメロディが特徴で、特に「Hooked」はデビュー当時のエネルギーを彷彿とさせる。これまでの作品と比べても、今が全盛期と言っていいほどの完成度を誇る。
デビュー当時のフランツ・フェルディナンドは、2000年代のポストパンク・リバイバルの波に乗りながら、ニューウェイヴのエッセンスを巧みに取り入れたバンドとして登場した。2004年のデビュー作『Franz Ferdinand』は、カーディガンズなどを手掛けたスウェーデンの名プロデューサー、トーレ・ヨハンソンのもとで制作され、独特の軽やかさと鋭さを併せ持つサウンドで一気にスターダムに駆け上がった。「Take Me Out」の爆発的な成功もあり、日本でも広く知られるバンドとなった。
しかし、その後の活動の中でメンバーの入れ替えが続き、近年はアレックスの色がより強く出る形に変化してきた。それでもバンドとしてのアイデンティティは失われておらず、むしろ近年は、インディーバンド的な粗削りな勢いよりも、より精度の高い楽曲を追求する方向へとシフトしている。
本作のテーマは「恐怖」。現代社会における様々な不安や恐れを題材にしているが、音楽的には決して悲観的ではなく、むしろダンサブルでエネルギッシュな方向へ昇華している。これはデビュー当時からのバンドの持ち味でもあり、「考えるよりもまず踊れ」という精神を貫いているように感じられる。
同時期にデビューしたキラーズも、ここ数作はより「大人のロック」としての成熟を見せているが、フランツ・フェルディナンドも同様に、キャリアを重ねたバンドが持つ余裕と強度を感じさせる作品を作り続けている。
ベテランがこうしたキレのある作品を届けてくれるのは素晴らしい。長年のファンはもちろん、久々にフランツ・フェルディナンドを聴く人にもおすすめできる。嬉しい傑作!