朝から60年代の音楽をシャッフルで聴いていた。最近じっくり聴く機会がなかったが、改めて耳を傾けると、その後の時代の音楽と比べて作り込みすぎていない生々しさがある。演奏が生き生きとしていて、実験的な要素も多い。2000年代以降はサウンドのフォーマットが完成しすぎて、面白みに欠ける音楽も増えた。だが60年代のロックには、演奏者同士が目と目を合わせながら作り上げたような感覚がある。録音技術やプロダクションが洗練される前だからこそ、何が起こるかわからないスリルがあった。
60年代のロックは、ドラッグの影響によるサウンドの変化と、サイケデリックの隆盛が大きな特徴だ。ビートルズの音楽をたどるだけでも、その変化は顕著に表れている。
「Rubber Soul」ではマリファナの影響が色濃く出た弛緩したサウンドに変化。「Revolver」ではLSDの影響を受けた幻覚的な音作りが顕著になり、「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」ではサイケデリック表現が頂点に達する。
「The White Album」はLSD的なドンシャリ感に加え、ヘロインによる沈み込むような雰囲気が漂う。「I'm So Tired」の気だるいボーカルや、「Happiness Is a Warm Gun」の断片的な曲構成は、まさに当時のドラッグカルチャーを反映している。音の浮遊感、沈殿するようなグルーヴがアルバム全体を覆い尽くし、まとまりを失いつつあるバンドの状態とシンクロしている。
ロックシーン全体を見ても、ビートバンドの台頭からサイケデリックへの発展は明白だ。アメリカではヴェルヴェット・アンダーグラウンドが登場し、ノイズとポップを融合させた独自のサウンドを生み出した。レコードコレクターズの60年代ベスト100で1位になったのも納得できる。ファーストアルバムはロックの枠を超えた前衛的な作品で、その後のインディーシーンにも絶大な影響を与えた。
一方で、ザ・バンドは異なるアプローチでサイケデリックの概念を昇華。ゆったりとしたグルーヴの中で、幻覚的なサウンドを表現した。「Music from Big Pink」は、60年代後期のサイケデリックの流れを別の角度から捉えた重要な作品だ。
ボブの名もなき者を観た今のタイミングで、60年代のベスト3を選ぶなら、1位はヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファースト、2位はボブ・ディランの「Blonde on Blonde」、3位はビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」かな。
「Blonde on Blonde」は最高のサイケデリック・ロック・アルバムだと思う。LSD的な陶酔感とブルースの土臭さが混ざり合い、音の厚みが異様に濃密。ディランはクラシックなロックの枠組みの中で、サイケデリックな音楽を表現した。一方で、ヴェルヴェットは最先端のノイズとミニマルなビートで、それをさらに過激な形に進化させた。
ボブ・ディランの映画をきっかけに60年代ロックを改めて聴き直しているが、やはりこの時代の音楽は奥が深い。再評価すればするほど、新たな発見がある。もうしばらくは60年代ロックを掘り下げることになりそうだ。