solid bond

never a dull moment

Tortoise & Bonnie / The Brave and the Bold

Brave & The Bold

Brave & The Bold

去年見たライブで一番素晴らしかったのは、静岡で見たトータスのライヴだ。張り詰めた緊張感と体に刺さってくるバスドラの音、意識を空へ連れてく鍵盤楽器の響き。甘い煙の臭いも絡まって、まるで現実世界から別のところに来たような感じだった。

この作品はトータスとボニー・プリンス・ビリーによる企画盤。ウタモノカバーが10曲収められている。目を引く有名曲は、ブルース・スプリングスティーンの代表曲で最近はナードな音楽マニアのテーマ曲になりつつある「サンダー・ロード」。エルトン・ジョンの小粋な名曲「ダニエル」も入っている。

良いか悪いかと言われれば間違いなく良いが、トータスのアルバムとしてはあまり面白味が無い。今までのアルバムの凝った音処理が無い。ライヴでのダイナミックな音も聴くことが出来ない。トータスの特徴である、畳み掛けるような打楽器の洪水が無いからだろう。しかし、ギターを主体とした、リハをあまりやっていない感じの剥き出しの音が、ボニー・プリンス・ビリーの歌と良くあっている。当初は冷たいアルバムだなあと思ったが、聴けば聴くほど凄くロマンティックな作品だと思うようになった。ジョン・マッケンタイアが体現する、「太陽にほえろ!のブラインドを少し開く石原裕次郎」的な男の色気が全開。かっこいい。トータスらしさは、この男の色気に溢れ出ている。

ジョン・マッケンタイアのこれまでのウタモノ仕事の文脈(GREAT3、ステレオラブ、シー&ケイク等)とは大きく外れている。ただ、本来の姿はコレなんだろう。良盤。