solid bond

never a dull moment

Guero / Beck

Guero

Guero

「ルーザー」を馬鹿みたいに聴いて、クソかっこいい!と吠えていたのはまだ僕が高校生の頃。学祭の準備なんかをしていて、体育館の中二階から生徒が落ちて病院に運ばれたりしていた。僕はといえばあまりヤル気も無くダラダラしていた。学校が終わったらすぐ家に帰って自分の部屋でロックを聴いていたように思う。

聴く音楽全てが新鮮だった高校の頃と、今の自分の感性は、だいぶ違うものになっていることは認める。もう10年以上になるのだ、メロウ・ゴールドの発売から。その間に自分の聴く音楽の幅も広がったし、いろいろなムーヴメントが作られては消えていった。メロウ・ゴールド的なものもとっくに消化されていった。よって、「新しい音楽の扉をノックし続けるオルタナ・スター・ベック」という認識はさっさと捨てなければならないのだが、ずっと出来ずにいた。必ずベックに期待してしまう自分がいた。そう、オデュレイはもとより、ミューテーションズ、シー・チェンジと、必ずそれなりにその期待に応えてくれる、頼もしいベックがそこにいたからだ。
しかし、このアルバムがそんなベック像をようやく吹き飛ばしてくれた。これから僕の中でのベックは、U2ローリングストーンズ、オアシスあたりと同じ「スター」だ。

自分の過去のアルバムを自分で焼き直した内容。割り切ってしまえば悪くない。i-Podで一曲一曲バラで切られれば「お!いいじゃんコレ!」と思うだろう。それも全曲。クオリティは相当なものだ。ただ、マインドが乗っかっていない。今までのベックには「クール」とか「必死」とかいろんな気持ちが乗っかっていた。でもこのアルバムには素晴らしい「曲」しかない。商売やっちまったなあ、ベック。きっと次のアルバムはダークな方向へ向かうんだろうなあ。

繰り返すが曲は凄く良い。ただ、童顔の少年もオッサンになるときが来るという事を認識して、寂しくなるアルバム。