solid bond

never a dull moment

Songs for Silverman / ben folds

Songs for Silverman (W/Dvd)

Songs for Silverman (W/Dvd)

一度大きなブレイクを体験し、なおかつコツコツとコンスタントに作品を発表するアーティストは、そのテンションの保ち方が非常に難しいと思う。
ベン・フォールズもトリオのベンフォールズファイブとして日本を起点に大ブレイクした。デヴューアルバムが大売れ。ただしバンドでのその後のアルバムは、それなりのレベルを保っていたけれど、一枚目のキレをすっかり失ったものになっていた。ライヴは凄いんだけど。BF5の解散後、ソロとして前作をリリース。ここにはすっかり輝きを取戻したベンがいた。住まいをワイフの拠点であるオーストラリアに移し、生活の基盤をしっかりと固め、その上で表現を研ぎ澄ませた純ポップなアルバム。ロック的では無くなったが、メロディーの醍醐味はそれを充分補った。しかし、その傑作リリース後また活動は低迷する。日本では三部作EPとして発表された作品は、どれも今までのベンの標準レベルに達しない緩いものだった。ベンもこれまでか、と思ってたところで満を辞して届いたのがこの新作。

基本的にはピアノ・ドラム・ベースというBF5のときと同じ編成に戻っている。即ち、ダイナミックな破壊力が戻っており、アレンジも豪快になっている。前作のポップな音も良かったが、やはりこのロック的な音がベン・フォールズ。波打つようなリズムが凄く気持ちよい。VF5のときよりも、叙情的なピアノと、節度の効いたリズム隊が大人な感じになっている。しっかり年齢を重ねている感じが音に溢れていて、こういう進化は大歓迎だ。曲もよく練られた佳曲が並ぶ。前作のわかり易いポップソングとは違うベクトルのメロディーを持つものが多い。噛み砕いているうちに「ああ、いいわ」という感じになる。沁みてくる。今回最も話題を集めているのは8曲目の「LATE」。ツアーで一緒になったこともある、亡きエリオット・スミスへ捧げるバラードだ。このアルバムを象徴するような叙情的で控えめなメロを持つ美しい曲。鍵盤の音が泣いている感じで、とても感動的。エリオットの歌が好きだった人には是非聴いてもらいたい。

アルバムにはベンの家族や美しい妻の写真が沢山載っている。これを見ると凄くベンは今充実しているようだ。これから先もきっと素晴らしいアルバムを作ってくれると思う。