Doves / Some Cities

Some Cities

シーンでそれなりの位置を確保するには、傑作アルバムを２枚作ればよい。ＯＡＳＩＳもＢＬＵＲも２枚続けて傑作を出したからこそ、高い評価を得てブリットポップシーンから抜け出すことに成功した。名前をシーンに残すにはとりあえず２枚成功すればよい。しかし、３枚傑作を出すということは非常に難しい。ここ数年の間に出てきたＵＫバンドで三枚優れたアルバムを作ったバンドをあまり知らない。

ＤＯＶＥＳも、（再）デヴューから２枚傑作を続けた。１枚目はＵＫの陰の部分、２枚目は街から生まれた高揚感をアッパーに表現した。どちらもＵＫ独特のドラッグの効果を感じさせる音で、唯一無比のサウンドだった。高い評価を確立した。
そして三枚目になる新作がこの「SOME CITIES」だ。僕としては非常に評価しづらいアルバムだ。悪くは無い。しかし2枚の傑作アルバムを聴いて感じたときの衝撃は感じることができなかった。圧倒するような凝ったサウンドも無く、普通のギターロックの定型に則ったサウンドで全編占められている。ＵＫギターロックの模範のようなサウンド。乗っかるメロディーはダヴズならではの湿った陰のあるメロディーで、そりゃ悪くはない、良いのだが、少なくとも攻撃的なアルバムでは無いな。独特の酩酊感も、サウンドに閉じ込めることはできずスタジオの空気で流れてしまった感じがする。アルバム一枚の構成もあまり良くない。途中途中で雰囲気を断絶されるような曲順になっている。i-Podで聴く分には構わないのだが。２作目までにあった作品の質を高めようとする意識を、感じられなくなったのが痛い。優等生が７割の力で簡単に80点を取ってしまったような感じ。レコード会社を移籍でもして、もう一度再起して欲しい。