solid bond

never a dull moment

John Frusciante /inside of Emptiness

Inside of Emptiness

Inside of Emptiness

 誰もが無謀だと思った連作シリーズの第四作目。このシリーズ、曲単位での出来・不出来は当然あるが、一作ごとに作品としてある程度のレベルを確保し、確実に「ジョン・フルシアンテの魂」を注ぎ込んで作られている。さすがだ。
 今回の作品は、非常にロック的な作品になっている。 一曲目から壊れそうなギターのフレーズが爆発だ。エレキギターが表面に出て、久しぶりに「ギタリスト」ジョン・フルシアンテを認識する。
 だが、ソロアルバムにおけるジョン・フルシアンテのギターと、バンド時のそれとは、何か様子が違うのだ。チリ・ペッパーズにおけるフルシアンテのギターは非常に「生」を感じさせるものだ。フリーやチャドの演奏に引っ張られる所もあるのだろうし、当然プロデュースワークも違うのだが、色ツヤを持っていて非常に生き生きとしている。中国の画家が白紙に墨で絵を描くような大胆さを感じる。しかし、ソロでの彼のギターは非常に冷たい音だ。ナイフで肌を切り、その血が冷たい雪の上に落ちるときのような感触。
 今回のアルバムは、その冷たいギターの音と、突き放したように高音部が強調されたドラムの音が、神経にキンキンと攻めてくる感じだ。「will to death」あたりの音に比べれば明らかにとっつき難い音だ。また、このアルバムは、きっとギターのフレーズのアイデアから作られた曲を集めたものなんだと思うが、アイデアだけで勝負して、曲として消化できていない曲が多い。フルシアンテは凄く気に入っているアルバムとのことだが、僕は「will to death」のほうがずっと好きだ。しかし、五曲目のギターソロを突破口に、アルバムの中へ溶け込んでいくと、なんだか凄く優しい作品のような気もしてくる。切った肌から流れた血は雪をどんどん溶かしていく。その温もりか。僕には肯定も否定も出来ないアルバム。