solid bond

never a dull moment

paul weller / studio150

Studio 150

Studio 150

ポール・ウェラーは「センス」で常に勝負してきたと思う。パンクの嵐の中でモッズとして登場したデヴュー時、言わずもがなのスタイル・カウンシル期、ブリットポップで浮上した後しっかり自分のキャリアを成熟させたソロ期、全ての時期において、自分の引き出しから何を、どういった形で出すか、即ち自分のセンスによる再構築・再編集によって成功してきたと思う。そういった意味では非常に90年代型のアーティストだ。
 そんなウェラーの引き出しは、キャリアの都度、カバー曲というカタチでも表に出ている。ジャム時代の「デヴィッド・ワッツ」やソロになってからの「セクシー・セディ」あたりはとても完成度が高く、カバー曲をまとめたアルバムも作られた。
 そして、デヴューから27年を経て作られたのがこのカバーアルバムだ。ウェラー曰く、「自分のお気に入りの曲というより、演奏してみて自分の解釈が出来る曲を選んでみた」とのこと。お気に入りのスモール・フェイセズビートルズのカバーが入っていないのは少し残念だが、御大がおっしゃるとおり、全てウェラーのオリジナル曲と間違うぐらい、ウェラー色に染まりきっている。
 
 ここ数年で最もポップな作品になった。全ての曲にそれぞれ顔があり、また、かなり上品にアレンジされている。スタイル・カウンシルっぽい曲も何曲かある。ヘヴィー・ソウルあたりでピークを迎えたウェラーのロックへの情熱は、かなりバランスのとれたものに変わってきたようだ。歌声も、ツバを唾してばかりいるものばかりでなく、ぐっとチカラをかみ殺して歌う曲もあり、更に表現の幅が広がった。
 アルバムの最後を飾るニール・ヤング作の「バーズ」がこのアルバムを象徴している。ウェラーはニール・ヤングのような天才型のアーティストではない。しかし、オリジナルの荒々しい「バーズ」とは異なる、美しく整えられたポール・ウェラーの「バーズ」を作ることが出来る。これがウェラーの生きる道だった。今までも、これからも。