solid bond

never a dull moment

芥川賞同時受賞の金原に比べると、こちらのほうが古典的な感じがする。文章がどうの、ってのはよくわからないが、内容的にはこちらのほうが伝わるものがある。わかり易いといえるのかも。ただ、話の展開があまり面白くない。青春モノと呼べると思うんだが、もっと細かい描写で「お!」と思わせて欲しかった。こちらも随所に狙った感じの性的な描写が入ってくるのだが、入り方が「ピアス」よりわざとらしい。もっと新しい感じでそういうものを表現できないのだろうか。
 どうして「にな川」のようなオタク少年を題材に選んだのかよくわからんが、奇をてらった作品でではなく、普通の作品を書かせたときに実力が発揮されるのではないか。金原ひとみよりも綿矢りさのほうが、数年後には良い作品を書いてそうな気がする。ただ、この小説に限って言えば、20歳前の人間が読むべきもので、僕らみたいなオッサンたちが語ったりするものではないような気がする。村上龍より赤川次郎という感じだ。
 このぐらいの作品ならワタシでも書けるって、読んだ若者は誰でも思うんじゃないか。「面白い」と感じるヒトの気持ちはわからないが、新しいなにかがきっとここから生まれてくるんだろう。ピストルズを聴いて誰もがギターを持ったように。そして数年後に大粛清されるんだろうなあ。

綿矢・金原の両者に共通するのは、どちらも言葉遣いなどで世代感を出そうとしてるが、00年代の若者を象徴する文化が何も出てこない。音楽でもスポーツでもなんでもいいんだが。多分その辺が凄く薄いんだろうなあ、と思う。大学でいろいろ経験してください。