solid bond

never a dull moment

「12 Memories」は、前作までのナイジェル・ゴルドリッチのプロデュースから離れ、初のセルフプロデュース作品となった。
 聴けばまず、音の質感の違いに違和感を感じるだろう。音を柔らかく重ねていた前作までの音と違い、ザクザクとしたバンドっぽいサウンドになっている。
 聴き進めていくうちに、リズムパターンも変化していることに気づくと思う。これはドラマーのニールの怪我が影響しているのかもしれない。明らかにドラムの手数が少なくなっている。シンプルなビートになった。
 そして、曲調もだいぶ変わった。AからBへいきCへいく、というような王道の中でクラシカルなアンセムを連発していた従来の作風ではなく、突如として感情の線がブチぎれたり、変化の少ないメロの中で美しさを出したりしている。前と同じような曲、ってのがない。フランはかなり意識的に作風の変化を考えたのではないか。なんとなくREMの作風に似てきたな(曲は全然違うけれど)と僕は思った。新しい作風の中でもしっかり質の高い素晴らしいメロを書いているのがホント凄い。

 「変わった」といえるアルバムだと思う。その変化が、バンドにとって大きなプラスやマイナスをもたらしている訳ではないってのが面白い。そうすると、このアルバムはつまらないアルバムだということになりそうだが、全く
そんなことは無く、聴けば聴くほど味の出る、ホント素晴らしい名盤だと思う。「このアルバム、どこがいい?」と言われて明確な答えを出すのが難しい。結局、非常にtravisなアルバムなんだと思う。フランの声、素晴らしい
メロディー、がっちりまとまったバンドサウンド。ふむ、根底は何も変わっていない。むしろ老獪に深化している。

 このレヴューを書くにあたり、全てのアルバムを聴きなおしてみた。
1STからずっと良い曲・良いアルバムを出し続けている化け物バンドだということを改めて実感。「12Memories」も、長く聴かれ続けるアルバムになるだろう。

普段歌詞はほとんど読まないんですが、2曲目の歌詞にはなんか凄く心震わされました。